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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)231号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願考案の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1  本願考案と第一引用例記載のものとの間に審決認定の一致点、相違点があることは、当事者間に争いのないところである。

2  本願考案の概観

成立に争いのない甲第二号証(本件出願の公告公報)によると、次の<1>、<2>の事実を認めることができる。

<1>  本願考案は、前記当事者間に争いのない本願考案の要旨(請求の原因二)のとおりの自動製袋機に関するものであるが、従来、この種の自動製袋機においては、感圧接着剤として有機溶剤を含むものを使用していたため、乾燥工程が必要であつて、乾燥するのに時間を要し、装置が複雑になり、袋を製造する速度が減少し、また、有機溶剤は人体に有害であつて公害の原因になり、火災の危険性もあるという難点があつたこと(第一欄第三一行ないし第二欄第一行)。

<2>  本願考案は、右の難点を解消するため、有機溶剤を使用せず、凝固後感圧接着性の得られるホツトメルト接着剤(第二欄第一三行)を使用することとしたものであること(第二欄第二行ないし第四行)。

3  接着剤について

原告は、合成樹脂製フイルムから成る袋の開口部付近に付着させる感圧接着剤の必須の条件の一つとして、「袋の開閉を繰り返して行えること。そのために、接着剤の凝集力が、物品に付着しようとする接着力に比して大きいこと。」を挙げている。そして、第二引用例に記載の粘着剤は、合成樹脂製フイルムから成る袋の開口部付近に用いると、一度接着し袋を閉じて次に開く場合、粘着剤が破壊されて袋の両側に残つたり、袋が破損したりするから、凝集力に比較して接着力が大きいのであつて、合成樹脂製フイルムから成る袋の開口部付近に用いるのに適しないと主する。

しかしながら、前記本願考案の要旨には、原告が主張する右のような限定がないことが明らかである。また、前掲甲第二号証によると、本願明細書中の考案の詳細な説明にも、本願考案で用いられる感圧接着剤に関し、右主張のような特質を有することについての記載が、何ら存しないことが認められる。

なお、前掲甲第二号証によると、本件公報には、「一般にホツトメルト接着剤は常温で固体であるが加熱すると液体となる接着剤である。この考案においては凝固後感圧接着性の得られるものが必要であつてこのようなものは従来感圧接着部を形成するためには全く用いられていなかつた。しかしながら、横浜ゴム株式会社へこの考案の考案者が依頼して開発されたハマタイヤホツトメルトKM―010で表されるホツトメルト接着剤は良好な感圧接着性が得られることが判明した。」(第二欄第二〇行ないし第二九行)と記載されていることが認められるが、このような抽象的な記載のみから、本願明細書の考案の詳細な説明において、感圧接着剤が「袋の開閉を繰り返して行えるもので、そのため、接着剤の凝集力が、物品に付着しようとする接着力に比して大きい」という特質について触れられているということはできない。

したがつて、原告の前記主張は、本願考案の要旨に基づかないものであつて理由がない。

4  相違点について

成立に争いのない甲第四号証(第二引用例)によると、第二引用例に、次の<1>、<2>の記載があることが認められる。

<1>  「従来、粘着剤は粘着テープ、ラベル等種々の用途に使用されてきている。テープ等への粘着剤の塗布は粘着剤を溶剤に溶かした粘着剤溶液をロール、スプレー等の手段によつて基材へ塗布する方法がとられている。しかしながら、かかる溶剤の使用は公害、火災、労働衛生等の面から近年ますます社会問題として重大視されるに至つている。」(第一頁右下欄第一一行ないし第一七行)

<2>  「本発明の熱溶融型粘着剤の用途は各種粘着テープ、ラベル類、感圧性薄板、感圧性シート、各種軽量プラスチツク成形品固定用裏糊、カーペツト固定用裏糊、タイル固定用糊などに有効であり、特に粘着テープ、ラベル用として有効である。」(第三頁右下欄第一〇行ないし第一四行)

また前掲甲第四号証によると、第二引用例記載のものは、右<1>に記載の難点を解消することも、技術的課題の一つとしていることが認められる。そうすると、第二引用例記載のものの技術的課題は、前記2の項で認定した本願考案の技術課題と共通するものである。また本項で認定した右<2>の記載によると、第二引用例記載のものにおける粘着剤の用途には、合成樹脂製フイルムの袋も含まれているものということができる。したがつて、第二引用例記載のものの粘着剤は、本願考案における接着剤と、その適用分野を共通にするものである。

他方、請求の原因四の4のうち、<1>ないし<5>の審決の認定事実については当事者間に争いがない。

右にみたところによれば、審決が認定、判断しているように、第一引用例記載のものの接着剤に代えて、第二引用例記載のものにおける熱溶融型粘着剤を使用することに想到し、そのための装置である「加熱溶融手段を備えた塗布装置」を採用し、乾燥を不要とすることは当業者にとつて極めて容易なことであつたということができる。

5  まとめ

以上判断したところによれば、原告主張の審決取消事由は理由がなく、本願考案は、第一引用例記載のもの及び第二引用例記載のものに基づいて極めて容易にすることができたとした審決の判断に、誤りはないというべきである。

三  よつて、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

フイルム半折機により半折して供給される連続した合成樹脂製フイルムの折り目と反対側の縁部付近にフイルムの進行方向に延びる感圧接着部を形成した後適当間隔ごとにフイルムの進行方向を横切る方向に溶断及び溶着して袋を形成するものにおいて、凝固後感圧接着性の得られる溶融したホツトメルト接着剤をフイルムに塗着させて前記感圧接着部を形成するホツトメルト融着機を設けたことを特徴とする自動製袋機。

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